今回のテーマは地価水準が高い地域(特に都心部)には該当しないことが多い内容です。また地価水準が低い地域はマンション自体殆どないと思うので、地域的には限定されたコラムとなります。
地方都市の場合、マンションと云えども駐車場が必要な世帯が大半です。そして附置率が半分にも満たないマンションも多くあります。そのようなとき、マンションの住民は近隣に駐車場を借りているのが現状です。このことはマンションに駐車場があるにしろ駐車場代が発生するのが通常であるので、然程大きな論題ではありません。
問題は機械式駐車場やタワー式駐車場。今回はマンションの駐車場が機械式、タワー式の場合について問題提起します。これらの駐車場はメンテナンスが必要となります。しかしメンテナンスができる業者が限られるため割高な費用となることも珍しくありません。更にこれらの建築費は、分譲時の価格に織り込まれていますので多少なりとも割高物件となります。
また、中古マンションの機械式駐車場では、昨今増えてきたワゴンタイプ、RVタイプ等の車高の高い自動車が入りきらないという問題もあり、その場合機械式駐車場の変更工事等が必要になり、多額の費用が発生します。
更には法定耐用年数15年、現実的には20年程度は利用可能だとは思いますが、いずれにしても再建築のための減価償却分の費用をプールする必要もあるのです。
そうすると必然的に駐車場料金も近隣相場より割高に設定しなければならなくなります。結果的に割増費用を払って購入したマンションに更に割増費用を負担するといこともあり得ます。
では、どのような駐車場が理想か。それはこれらのメンテナンス、建替え費用等を考えるならば、多少の出費は覚悟のうえ、近隣に土地を買って平置き駐車場にすること、または広大地がなく、必要面積をキープできないなら、適度な土地を探して立体自走式にすること、場合によっては機械式等を取壊して平置きをいくつかキープするだけにすることなのです。これらの方法だとメンテナンス費用は余りかかりません。マンションは一般の戸建住宅と異なり耐用年数が長い住居です。管理組合の意思や管理状態にもよりますが40年、60年ということも珍しくありません。結局長い間マンションを維持し続けるならトータルで考えると、多少無理をしても買ってしまった方が安いということも十分にあり得ます。またその他の問題として、管理組合の運営に問題があった場合等で、積立金が不足していれば、建替え時には臨時徴収ということもあり得ます。そのとき、駐車場を利用する人と利用しない人の利害対立も起こり得るというリスクもあります。
但し、必ずしもこのようにすることがいいのかというと、そうでもありません。今回のコラムの冒頭で述べた通り、地価が高い地域では逆に土地購入の方がコスト高にもなり兼ねません。そもそも都心部等では駐車場自体あまり必要ない地域もあります。あくまで地域限定ということになります。またマンションが土地を購入する場合には、管理組合が法人化していないと法的に土地購入手続きが大変になります。それでも地域によっては検討の余地ありだと思われます。
次にマンションを評価する際への影響です。機械式駐車場付きの中古マンションを購入した人に話を聞くと、理事になって初めてメンテナンス費用の問題に気づいたということです。購入するときには気づかず、買ってから時間がたって初めて問題化したというのです。そしてこのような人は決して珍しくありません。
そうするとマンションの取引事例にはこれらの駐車場リスクが価格に反映されていない可能性が高くなります。リスクはあるが価格が市場に反映されていない、反映されていないから価格形成要因として考慮外も構わないと言い切れるでしょうか。
専門家として、これらのリスクが取引事例には反映されていないと判断した場合は、メンテナンス費用、建替え費用及び期間等を考慮した修正をする必要が生じます。また評価するマンションがこのような問題を抱えているなら個別的要因で補正する必要性もあります。中古マンションならば、過去のメンテナンス費用等は会計報告を見ればわかりますし、積立金等の積立額や滞納額についても判明します。積立金が不足していれば今後のメンテナンス、建替え等にも影響が出てきますので、会計報告等を見ることは大切な事です。
話は戻りますが、機械式等駐車場をやめて土地購入を検討する場合、よき相談相手となるのが不動産鑑定士ではないでしょうか。例えばDCF法適用時のキャッシュフロー表を応用する等、直接鑑定とは関係ない事柄でも、日ごろの鑑定評価を応用することにより、これらの検討を行い得ると思います。