建物は年数が経過するに応じて価格が減価していきます。これは当たり前のことですがその減価の方法として定率法、定額法が一般的となっています。では実際の市場ではどのような動きを見せるのかが気になり、5,000近い事例を分析してみました。
方法としては土地建物一体の取引事例から建物価格を取り出し、取引時点からの経過年数ごとに事例をグループ化し、その平均価格等(平均値、中央値、価格上位及び下位のそれぞれ20%を除いた平均値)を出すという方法。その際に異常値を示すもの(事情があるものや、リフォーム済み等で明らかに価格がかけ離れるもの)はほぼ全て削除し、結果的にはサンプルは約2,000事例まで絞りました。
結論としては定率法に近い減価となります。つまり価格は最初の数年は大きく下落し、年数が経つにつれ減価は少なくなっていくのです。
また過半数以上の事例で建物価格が無価値になった年月は築後30年で、その際の理論値の現価率は分析方法にもよるが3~5%となりました。また建物価格が0円となっている事例の平均経過年数は29年との結果も見られました。ただしこれはいつ0円になったかまでは判明できない、あくまで取引されたときに0円だった事例の平均経過年数であるため注意は必要です。
俗に言われる「家は20年で価値なしだ」というのはこの結果からは読み取れません。実際20年経っていても価格が付いている建物は無数に存している、このあたり業者にヒヤリングすると、結局は物件次第だということでした。綺麗に使ってあり手入れも良ければ20年経っていても値段は付く、ごく当たり前のこと。
もうひとつ面白い分析結果があります。それは別荘地の中古建物。その価格は都市部よりも減価しにくいのです。
これは中古別荘のほうが新築より売れるという業者への取材から理由はわかってきます。この不景気のご時世で別荘地を更地で買って建物を新築すると、たとえどんなに土地が安くても建物総額が張るため、セカンドハウスに大金を投下できる人は一部の金持ちに限られるから、更地は売れにくい。だったら中古建物が付いていて建物代が安く抑えられるほうがよく売れるというわけです。また建物を新築した場合、公営水道がない別荘地等では水道加入金等が必要となり、それも決して安いとはいえません。だから更地を購入し新築するよりも中古建物の方が需要があり、その結果中古でも値が付きやすいのです。
不動産鑑定士は宅建業者と異なり生の声は聞きにくい面があります。しかし一方で宅建業者にはない大量のデータを持っています。データ分析だけではわからなかった結果についての分析は、業者に聞けばある程度の答えが見えてくる感じがします。その意味でも常に生の声を集める習慣を鑑定士は持つべきだと実感しました。